2026年9月、音楽プロデューサーであり著述家でもある渋谷ゆう子さんの『新刊「良い音」の秘密(技術評論社)』が発売されました。
2024年末頃、音楽産業の裏側を紹介する本を執筆するにあたり、渋谷さんから取材を受けました。どのような一冊になるのだろうと楽しみにしていましたが、発売された本に自分の名前を見つけ、録音技術者9人の一人として取り上げていただいたことを、光栄に思うとともに、少し照れくさくも感じました。

本書は、音楽産業を支える録音現場の実情を深く掘り下げ、業界が抱える本質的な課題にも踏み込んでいます。読み応えがあり、さまざまなことを考えさせられる一冊です。
私たち録音技術者が「良い音」について語ろうとすると、どうしても専門用語が多くなり、一般の方には意図が伝わりにくくなりがちです。しかし本書では、渋谷さんが録音の現場で働く技術者たちの仕事や考え方を、わかりやすい言葉で紹介しています。
渋谷さんは、日本の録音・マスタリング技術者9人への詳細なインタビューを通じて、それぞれの仕事を支える技術、哲学、そして美的判断に迫ります。彼らの経験から見えてくるのは、録音が単なる音の技術的な再現ではないということです。音楽を聴き、解釈し、どのように聴き手に届けるかを判断する、その積み重ねが録音という仕事なのです。
本書はまた、録音の黎明期から、マルチトラック録音、デジタル技術、イマーシブ・オーディオ、AIによる音楽制作の登場に至るまで、録音技術の発展をたどり、技術の進歩が音楽表現の可能性をどのように広げてきたかを示しています。
第7章「録音空間」では、私への取材を通して、イマーシブ・オーディオや空間知覚、そして演奏の雰囲気や感動を音でどのように伝えるかが紹介されています。
オーディオに関心のある音楽ファンの皆さんに、ぜひお薦めしたい一冊です。
