プロフィール & 事績

ご 挨 拶

半世紀にわたる立体音響への探求

入交イマーシブ・オーディオ研究所を主宰する入交英雄いりまじり ひでおです。

「リアリティのある音をどのように実現できるのか」
私は大学の卒業研究以来、半世紀以上にわたり立体音響の
可能性を探求してきました。

そして商用3Dオーディオフォーマットの登場以降は、
「その魅力をどのように体験できるのか」
「どのように録音すれば実現できるのか」
「イマーシブ・オーディオの本質とは何か」
という問いに向き合い続けてきました。

毎日放送、WOWOWで技術職として活動し、2012年以降は放送分野におけるイマーシブ・オーディオの技術開発、制作技術開発、事業開発にも携わってきました。

近年、イマーシブ・オーディオはようやく社会的な認知を得て、本格的な普及の段階へと入りつつあります。その状況を目の当たりにし、「これは引退している場合ではない」と考え、入交イマーシブ・オーディオ研究所の設立を決意しました。

録音家は職人であり科学者である

録音家は職人であると同時に、科学的な視点を持つことが大切です。

録音技術の多くは音響学や物理学に裏付けられています。職人の持つ技能は先人の経験や実践から受け継がれますが、特に3Dオーディオの録音では、経験則だけでは対応できない課題があります。

試行錯誤だけでそれらを克服しようとすると、膨大な時間を要しますが、音響学の知識があれば、課題解決への近道となります。

私は、これまで得た知見を、科学的アプローチを知りたい方々と共有できればと考えています。

技術だけでは音は創れない

一方で、録音は科学だけで完結するものではありません。優れた録音には、感性や直感、そして音楽的洞察が必要です。

特にイマーシブ・オーディオでは、複数のアプローチの中から最適解を見極める判断力が求められます。例えば、マイクアレンジメント(マイク配置)を決断するには、経験と聴感が大切であり、それらを養うには実際にやってみることが必要です。

私が目指すイマーシブ・オーディオ

私が目指しているのは、自然で音楽的な空間表現です。

10代の頃からオーボエ演奏、指揮、作曲に親しみ、音楽と向き合ってきました。その経験によって、録音技術だけでなく、音楽的な視点から音を捉える力も培われました。

私は録音家であると同時に、空間音響クリエーターでもあります。

だからこそ、音響学的な裏付けと音楽的感性の両方を活かしながら、本物の臨場感を持つイマーシブ・オーディオを追求し続けています。

長年にわたり積み重ねてきた知識と経験。そして、音楽と音響の両方に向き合ってきた歩み。時間はかかりますが、その両方を積み重ねることで、近づける世界があります。

これからも、その知識と経験を最大限に活かしながら、イマーシブ・オーディオの普及と発展に貢献していきたいと考えています。

1プロフィール

入交 英雄(芸術工学 博士)
Hideo Irimajiri, Ph.D

学 歴

  • 1956 日本に生まれる
  • 1979 九州芸術工科大学 芸術工学部 音響設計学科 卒業
  • 1981 同大学大学院 修士課程 修了
  • 2013 九州大学大学院 博士課程(社会人向け)修了。残響に関する研究により博士(芸術工学)の学位を取得

職 歴

  • 1981 毎日放送株式会社 入社
  • 2013 新規事業開発研究チームに所属し、イマーシブ・オーディオの事業化に向けた研究・実証実験に従事
  • 2017 株式会社WOWOWへ転籍。イマーシブ・オーディオの制作技術開発および事業開発を担当
  • 2025 WOWOWを退職。同年6月、入交イマーシブ・オーディオ研究所を設立

資 格

  • 第一級無線技術士 1984年10月25日取得

2事 績

放送音響、サラウンド録音、残響研究、ラウドネス技術、そしてイマーシブ・オーディオ制作技術の分野において、研究・開発・制作・普及活動を行ってきました。また、録音エンジニアとして音楽、舞台芸術、スポーツ中継など多様なコンテンツの制作にも携わってきました。

以下に主な事績を示します。

研究・技術開発

1.サラウンド録音・空間音響研究

2006年AES日本支部によるサラウンド録音実験を主導。オーケストラ録音における各種マイクアレイの評価研究を行い、日本のサラウンド録音技術発展に貢献した。

主な研究発表
  • 「オーケストラ収録における各種マイクアレイの特徴について」
    AES日本支部サラウンド録音実験報告
    AESジャパンカンファレンス大阪(2007)
    “Hands-on Demonstration: Subjective Evaluation by Reference Recordings with Surround Main Mikings for Classical Orchestra”
    Workshop
    122nd AES Convention, Vienna(2007)
  • “Evaluation of Surround Main Mikings for Classical Orchestra”
    Workshop
    123rd AES Convention, New York(2007)
  • AESサラウンド実験「シンフォニーホールにおけるオーケストラ収録」
    『放送技術』誌 第61巻5月号, pp.136–145(2008)

2.残響研究・音響評価

九州大学大学院芸術工学府(社会人博士課程)において、電子残響付加に関する研究を行い、演奏音の特性と最適残響レベルの関係を明らかにした。
これらの研究成果は後のイマーシブ・オーディオ制作技術の基盤となり、2013年に博士(芸術工学)の学位取得へと結実した。

主な研究発表
  • 「ミキシングエンジニアによる無響室録音への電子残響の最適付加レベルについての調査」(2008)
    日本音響学会 音楽音響研究会資料 MA2008-70, pp.29–34
  • 「無響室録音音源への電子残響の最適付加レベルの調査」(2009)
    日本音響学会 建築音響・音楽音響合同研究会資料 AA2009-66, MA2009-74
  • 「無響室録音オーケストラ演奏音の最適残響レベル」(2013)
    岩宮眞一郎との共著、『日本音響学会誌』69巻5号, pp.215–223
博士論文
  • 『演奏音の最適残響レベル
    ― 無響室録音音源と電子残響を用いた、音源信号の特徴量と残響の最適ミキシングレベルの関係の考察 ―』(2013)
    九州大学大学院芸術工学府 博士論文(芸博甲第154号)

3.ラウドネス研究・放送音声技術

デジタル放送時代における音量管理技術(ラウドネス)の研究・開発に取り組むとともに、ARIB委員および日本民間放送連盟(民放連)委員として、ラウドネス運用規定の策定と普及活動に携わった。放送音声の評価手法、ラウドネス測定技術、運用支援ツールの開発を通じ、日本におけるラウドネス運用の定着に貢献した。

主な論文・技術報告
  • 「デジタル放送における送出音量はどうあるべきか」『放送技術』誌 第61巻7月号, pp.160–167(2008)
  • 「アナログラウドネスメータの開発」『放送技術』誌 第63巻12月号, pp.159–168(2010)
  • 「ラウドネス測定アルゴリズムとその特徴」『放送技術』誌 第65巻9月号, pp.63–68(2012)
  • 「ラウドネス運用の検証 前編」『放送技術』誌 第67巻3月号, pp.129–136(2014)
  • 「ラウドネス運用の検証 後編」『放送技術』誌 第67巻5月号, pp.171–176(2014)
  • 「ユニバーサル・ラウドネスコントローラの開発」『放送技術』誌 第68巻8月号, pp.90–98(2015)
主な講演
  • Inter BEE 音響シンポジウム(2010)
    「ラウドネス音声基準規格はユーザをリモコンボリュームから解放する切り札になるか」
  • Inter BEE セミナーシリーズ(2011)
    「ラウドネスサミット」
    ラウドネス運用開始を目前に控え、理論と実践の両面から運用規定を解説する3日間のセミナーシリーズを企画・主査。
  • Inter BEE 音響シンポジウム(2013)
    「ラウドネス運用は成功したか?」
主な連載
  • 『PROSOUND』誌連載(2009–2013)
    「PROSOUND SEMINAR デジタル時代のラウドネスコントロール」(全6回)
    ラウドネス測定技術、運用基準、および放送業界における実践的課題について、理論と実例を交えながら解説した。

4.イマーシブ・オーディオ制作技術

毎日放送において2013年よりイマーシブ・オーディオの新規事業開発に従事し、Dolby Atmosの実証実験を開始した。2017年よりWOWOWにおいて、ハイレゾ3Dオーディオをコンセプトとした制作技術開発、配信技術研究、作品制作、および普及活動を推進した。

主な技術報告・制作事例
  • 「イマーシブ3Dオーディオ収録 名倉誠人『バッハ・パラレルズ』」『PROSOUND』誌 2020年10月号, Vol.219.
  • 「動画配信の音声高度化の実証~MQAとAURO-3D音声を用いた動画配信」『PROSOUND』誌 2021年2月号, Vol.221.
  • 「冨田勲・源氏物語幻想交響絵巻(2014改訂版)制作ノート」『PROSOUND』誌2021年6月号, Vol.223.
  • 「ハイレゾ・3Dオーディオ配信とωプレーヤー開発」『PROSOUND』誌 2021年12月号, Vol.225.
  • 「ボブ・ジェームス Feel Like Making Live! 3Dイマーシブオーディオ制作ノート」『PROSOUND』誌2022年2月号, Vol.226.
  • 「ハイレゾ・3Dオーディオ生配信の試み」『PROSOUND』誌 2022年4月号, Vol.227.
主な連載
  • 『PROSOUND』誌 連載(2021–2023)
    「イマーシブオーディオ制作のすすめ」(全9回)
    スピーカー配置、収録技術、各種フォーマット、音響学、ミキシング、音場キャプチャー、音質評価など、イマーシブ・オーディオ制作に必要な理論と実践を体系的に解説した。

5.専門書

分担執筆
  • 日本音響学会 編『音と時間(音響サイエンスシリーズ13)』コロナ社(2015)
    担当執筆:第8章「放送技術における音響と時間」

6.その他の活動

入間次朗のペンネームで音楽制作活動を行い、高校ラグビー大会テーマ曲「コズミック・ラグビー」、ダンロップ・フェニックス・トーナメント 番組タイトル曲「ヴィクトリー」、PCゲーム『ロードス島戦記』などの音楽制作を担当した。

3著書目録(年代順)

4ディスコグラフィ
(バランスエンジニア参加作品)