
カルモフォームの優れた吸音・遮音性能を測定結果と実例で検証し、ならまちスタジオへの導入効果を紹介します。
当研究所で吸音材として用いた「カルモフォーム」は、株式会社村松アクア製の吸音フォームである。この製品は吸音と遮音の両方の特性を持っている。本来、両立が難しい関係にある「吸音性能」と「遮音性能」を同時に備えた材料であり、特異な存在と言えるだろう。
吸音性能については、高域の吸音率が過度に高くない一方で、中低域の吸音性能が高いという特性を持っている。グラフ1は、厚さ50mmと25mmのカルモフォームの吸音率を示したもので、縦軸が吸音率、横軸が周波数を示している。当然ではあるが、厚い材料ほど吸音性能が高く、より低い周波数まで吸音することが読み取れる。
一般的なグラスウールでは、音波、すなわち空気の振動が微細な繊維の隙間を通り抜けるとき、摩擦や空気の粘性抵抗によって振動が熱エネルギーに変わり、音のエネルギーが減衰する。
一方、カルモフォームは、ほとんど空気が通り抜けない構造である。そのため、摩擦ではなく、

共振という仕組みによって音エネルギーを熱エネルギーに変えていると考えられるが、詳しい仕組みは分かっていない。神戸大学の環境音響学で多孔質材料に詳しい専門家に質問したところ、このような特性の材料は見たことがないとのことであった。
カルモフォームの吸音率の周波数特性
この性質は、遮音効果を持っていることの証左でもある。もちろん、コンクリートのような大きな遮音性能はない。しかし、50mmの厚さで平均18dBの遮音性能があり、遮音補強には非常に適している。特にホームシアターなどの家庭環境で、少し遮音を強化しつつ、音の聴こえを改善したい場合に重宝する材料である。

カルモフォームの透過損失の周波数特性
カルモフォームの「高域を吸い過ぎず、中低域をよく吸収する」という特性は、部屋の響きを調整するうえで大変都合が良い。スタジオやリスニングルームには、ある程度の残響が必要である。吸音し過ぎて無響室に近づいてしまうと、音楽制作や試聴において正確な判断がしにくくなる。
カルモフォームで唯一残念な点は、不燃材料ではないことである。不燃認定が取れていない材料は、不特定多数が集まるような建物の建築材料としては使いにくい。当研究所はプライベートスタジオであるため、この要件に該当するかどうかは微妙であるが、建物に固定するのではなくパーティション状の施工とすることで、建物の一部ではない扱いになるよう配慮した。
スタジオでは、吸音材としてグラスウールを使用するのが一般的である。しかし、グラスウールは高音が吸音され過ぎる傾向があるため、わざわざ反射する材料を壁の要所に組み込むことも多い。一方、低域についてはグラスウールだけでは吸音性能が不足する場合も多く、吸音トラップと呼ばれる大型の低域吸音機構を併用することもある。
それでも、定在波と呼ばれる低域の共振が発生し、音を濁らせてしまうことが少なくない。
当研究所では、わずか50mm厚のカルモフォームで大型パネルを作成し、この問題を解決することができた。ならまちスタジオは賃貸物件であるため、壁に直接施工することができない。そこで、2×4材の突っ張りシステムで枠組みを作り、パーティション状のパネルを設置した。
パネルは全部で4面、合計約20平方メートルの面積となり、特に中低音については満足のいく仕上がりを実現できた。
賃貸物件のため天井への施工ができず、天井面からの反射がやや聴こえるものの、商用の業務スタジオに負けない性能を確保できたと感じている。
当スタジオにおいて、カルモフォームの調音性能が音の解像度に大きく貢献していると言っても過言ではない。
偶然が導いた、カルモフォームとの出会い
なぜ、カルモフォームに行き着いたのか。
きっかけは、私が毎日放送のマスター業務を担当していた頃にさかのぼる。
当時は、放送局でもデジタル放送が始まろうとしていた時期だった。新しい専用機材が次々と搬入される一方、当時のデジタル機器は、まるでヒーターのように大量の熱を排出していた。
熱を逃がすために冷却ファンが高速で回り続ける。当然、その騒音も大きい。複数の機器が並ぶ居室は、仕事に集中することさえ難しいほど、耐えがたい騒音に満ちていた。
そんなある日、番組を監視している最中に、「静科」という吸音パネルが紹介されているのを偶然目にした。
「これを機材ラックの蓋に使えば、騒音を抑えられるのではないか」
さっそく、居室に設置されたデジタル機器のラックへ「静科」パネルの蓋を取り付けてみることになった。パネルの厚さは、わずか20mm。それにもかかわらず、測定すると7~8dBもの改善効果が確認できた。
通常、大きな防音効果を得るには、吸音材と遮音パネルを組み合わせた二重構造が必要になる。それが、たった一枚の薄いパネルで、はっきりと体感できるほど騒音を低減したのである。
驚くべき性能だった。
番組の中で紹介されていた、ある言葉を思い出した。
「中身には、フラワーアレンジメントで使われるオアシスと同じ素材が使われている」
そのキーワードを手掛かりに調べていくと、花材を扱う松村工芸という会社が製造に関わっていることが分かった。
さらに驚くことが起きた。
その会社の支店が、なんと毎日放送の向かいのビルにあったのである。
これほどの偶然があるだろうか。
さっそく支店を訪ね、素材や性能について話を伺った。話を進めるうちに、先方もこの素材を生かせる新たな用途を探していることが分かった。
騒音に悩み、その解決策を探していた私たち。
優れた素材を持ちながら、新しい活用方法を探していたメーカー。
両者の思いが重なり、やがて性能評価を共同で行うことになった。
番組監視中に偶然目にした一枚の吸音パネル。そして、向かいのビルに、その素材を扱う会社があったという、できすぎたような巡り合わせ。
カルモフォームとの出会いは、そんな幾つもの偶然から始まったのである。
